めまいと漢方
回転して嘔吐を伴うめまいから雲の上を歩くふわふわとしためまいなど、めまいも様々な種類があります。中医学ではその症状とその方が持つそもそもの体質からめまいの本質を探し、根本治療を目指します。
肝陽化風のめまい
中医学でいう「肝」は自律神経の調節を行う働きもある臓器です。この「肝」の「陽」が亢進しすぎる、つまり西洋医学的には交感神経興奮によって起こるめまいです。多くはストレス過多や怒りから起こるめまいであり、中医学的には肝陽が亢進することにより肝陰が消耗され「風」の症状が起こりそれが頭まで上がって起こるとされています。
症状としては頭のふらつき・めまい・張ったような頭痛・いらいら・怒りっぽい・起こるとめまいと頭痛が強くなる・顔面紅潮・耳鳴り・眠りが浅い・夢をよく見る・口の乾燥感・口が苦いなどを伴います。
きっかけがストレスによることが多いので、自律神経を鎮静させる作用のある処方で改善を図ります。それにめまいを起こす「風」の症状を鎮める作用のあるものを併用することが多くなります。
生活としてはストレスを発散することが大切で、ストレスを助長する香辛料の摂り過ぎや夜更かし、アルコールの摂り過ぎなどを避けてることも重要です。
陰虚陽亢のめまい
中医学でいう「陰虚」とは物質不足または水分保持能力不足などをさします。この場合水分保持能力不足により相対的に「陽」の力が過剰になり起こるめまいです。体質的に水分保持能力不足であったり慢性病などにより引き起こされる状態で、肝陽化風のめまいと同じ状態が起こりますが原因が不足から起こるので随伴症状が多少違います。
症状としてはふらつき・目の異物感・焦燥感・不眠・夢をよくみる・寝汗・手足のほてり・口の乾燥感などを伴います。
水分保持能力を改善する処方で改善を図ります。「肝」と「腎」の陰虚を改善する処方を服用することが根本解決となります。
生活としては夜更かしをさけ、香辛料やアルコールの摂り過ぎを避けます。水分保持能力不足ですが水分の摂り過ぎは悪化する原因となります。
心脾両虚のめまい
心脾両虚とは「心」の血液不足、「脾」のエネルギー不足が併発している状態です。中医学でいう「脾」は消化器を指しエネルギーや栄養を産みだす臓器であり、その「脾」が弱くなると栄養(血液)を産生しにくくなります。また中医学でいう「心」は循環器系と「こころ」の臓器で、「心」の栄養不良はこころや高次神経系の不良になります。よって心などの頭部に栄養が行きわたらず起こるめまいです。
症状としてはふらつき・目がかすむ・心身の疲労により症状が悪化する・動悸・疲労感・息切れ・倦怠無力感・不眠・食欲不振・顔色に艶がないなどを伴います。
胃腸を元気にさせて血液を補うことのできる処方を服用します。不眠なども同時に改善することが多くみられます。
生活としては胃腸を弱める冷たいものや甘すぎるもの、脂っこいもの、水分の摂り過ぎなどを避け、消化の良い食生活がおすすめです。
中気不足のめまい
中気は胃腸を指し、中気不足は胃腸が弱い虚弱体質の方、または過労による元気の消耗によって起こります。中気不足になると頭部にエネルギーを持ち上げる、もしくは血液を持ち上げることが出来にくくなりそれによってめまいを起こします。
症状としてはふらつき・めまい・横になりたがる・起立すると症状が増強する・過労により発作が生じる・全身倦怠感・話すのがおっくう・息切れ・汗かき・食欲不振・軟便などを伴います。
胃腸を元気にしてエネルギーや血液を上に挙げることを助ける処方を服用して改善を図ります。
生活としては心脾両虚と同じで冷たいもの、甘いもの、脂っこいもの、水分の摂り過ぎは避けて胃腸に優しい食生活を心がけましょう。
腎精不足のめまい
中医学でいう「腎精」は生命エネルギー根幹を指し、20代~30代にかけてピークをむかえ、老年期にむけて下降していきます。腎精不足のめまいは老年期に起こりやすく、生命エネルギーの不足により中医学でいう「髄」が不足することにより起こるめまいです。
症状としてはふらつき・めまい・耳鳴り・記銘力減退・目がかすむ・腰や膝がだるく力がない・インポテンツなどを伴います。
生命エネルギーを補う処方を服用します。動物性の生薬が配合されている処方を服用することが多く、ある程度の期間をかけてアンチエイジング効果を期待しながら改善を図ります。
生活としては適度な運動、特に下半身を強化できる運動がおすすめです。ウォーキングなどもよいでしょう。夜更かしも腎精を損なう行為なので控えましょう。
痰濁中阻のめまい
痰濁は中医学でいう老廃物。美食などにより消化不良から溜まることもあり、また胃腸が弱いことにより少ない飲食物からでも溜まることがあったりもします。水分と脂が混ざったようなものと表現されることもあります。これが頭部に溜まり巡りが悪くなって起こるめまいです。
症状としては回転性のめまい・頭重感・胸が張って苦しい・悪心・嘔吐・食べたいと思わない・四肢や身体が重だるい・いつも眠いなどを伴います。
老廃物である痰濁を取り除く処方を服用して、胃腸の改善を図ります。水分代謝を良くするものを服用することが多くなります。
生活としては甘いもの、脂っこいものは控え、水分の摂り過ぎはNG。胃腸が弱い方は胃腸に負担をかけず、利尿作用のあるお茶などもおすすめです。
めまいは原因も様々で、病院では対症療法になりますが中医学ではその原因別で処方は全く違うものになります。原因が全く違う処方を服用しても全く効果がないばかりか悪化する可能性もありますので自己判断ではなく漢方に詳しい方に判断してもらうのがよいでしょう。
参考文献:症状による中医診断と治療